ブログ

記事はありません。

校長室より「おこらいえ」

化学のメガネ

2026年3月7日 18時54分

797 日目

イラン空爆を題材に
自分の教科の授業を設計してもらう
「おさんぽメガネ」研修を
若い先生方に実施し
とても興味深い
教科横断型の授業が設計された
話を書きましたが
実は私も化学のメガネで
参加していました

私が設計した授業は
『爆薬』に関するものです

高校教科書に掲載されている
爆薬について説明しました

(1)TNT(トリニトロトルエン)
  画像 1
 カンボジアなど紛争のあった地域には
 今なおTNT地雷が埋まったままで
 毎年多くの方が犠牲になっています
 優れた嗅覚を持つ
 アフリカオニネズミを活用した
 地雷撤去が功を奏しているようです
 ネズミは軽く
 地雷を踏んでも爆発しないので

 地雷発見にうってつけなのだそうです
 生まれてから9ヶ月の間
 TNTの匂いをつけた餌を与え続け
 匂いを感知したら土を掘るよう
 特別な訓練を施したネズミが
 活躍しているそうです

(2)ピクリン酸(トリニトロフェノール)
  画像 2
 なんとも可愛い名前のくせに
 爆薬としては不安定で
 事故が多発するなど
 すぐキレまくるという
 とんでもないやつです
 舐めると苦いと言うことで
 ギリシャ語の「苦い(pikros)」
 が語源です

(3)トリニトロセルロース
  画像 3
 硝化綿ともいいます 
 手のひらの上に乗せ
 「ウィンガーディアム・レヴィオーサ」
 
 の呪文と同時に 
 温めたガラス棒でちょいと触れると
 『ボッ』と大きな火をあげて
 一瞬のうちに燃えるので
 授業中の手品に使っていました

(4)ニトログリセリン
  画像 4
 爆薬としての用途のほかに
 胸が痛いなど狭心症の発作や

 心不全が急に悪化して

 呼吸が苦しくなったときなど 
 いわゆる「心臓発作」の薬として
 用いられています
 心臓につながる冠動脈などを
 拡げる働きがあるからです

これらの爆薬の共通点に気づきましたか?
NOという部品を3つ持っている
ということです

NとOの結合の間には
大きなエネルギーが蓄えられていて
ちょっとした衝撃で  
一気に反応が進むのが
爆発のメカニズムです

古くは爆竹の本場中国で
硝石(KNO3)が用いられています

植物の成長に欠かせない三大栄養素
窒素・りん・カリのうちふたつが
硝石には含まれるということで
肥料としても用いられていました 

第一次世界大戦前
ドイツは凶作により
食物不足に悩まされます
当時硝石の輸入を頼っていた
チリとの関係が悪化し
硝石の供給が止まったからです

ドイツ政府は
硝石の化学的製造を
科学者への至上命令とします
オストワルトが
白金を触媒として
アンモニアからの硝酸の製造に
成功します  
オストワルト法の確立です

あとは窒素からアンモニアを
製造する方法を確立すれば
硝石を無尽蔵に作ることができます
窒素は空気中に充分に含まれるからです

オストワルト法と同じ白金を触媒に
鉄製の容器でその製造に成功します
しかし再現性がありませんでした
他の化学者が同じ白金触媒を試しても
うまく行かないのです

ハーバーは数千もの触媒を試したといわれます
いかに国家予算をかけた
プロジェクトだったかがわかります

ついにその触媒の発見にたどり着きますが
その触媒は「四酸化三鉄」
つまり鉄のサビ
つまり最初の成功は
白金ではなく鉄容器が触媒だったのです

ドイツ国民を餓えから救う大発見
しかしその発見の直後
ドイツは大戦へと突入していくのです
最初から兵器として使用する
つもりだったと推測できます

 缶切り
 腕時計
 ラップ 
 ティッシュ
 ランドセル 
 電子レンジ 
 インターネット
 GPS  
 ドローン  
これらの共通点は何でしょう?
高市総理が誕生した直後
このような代表質問がありました
さすが総理は
「軍事産業から生まれたもの」
と即答されていました

科学技術は人間生活を豊かにするもの
しかし為政者が命を蔑ろにした瞬間
世界を破滅へと追いやる凶器となります

先日のこの授業を実施した際に
地歴科の竹田先生に
「ドイツに硝石を輸出していた国は?」
と意地悪な質問をしたところ
「知らない」と答えました
そりゃそうでしょう
教科書にも資料にも
おそらく載っていない内容ですから
だからこそ
複数の教科のメガネで
歴史を振り返るのが
たいへん意味のあることなのです

社会と科学は
文系理系の区別などない
一体となって
人類の歴史を創っていたものだから

先日
『教場〜レクイエム』
を見てきました
爆薬トリメチレントリニトロアミン
 画像 5
が登場していました